原題 | Theoretical Computational Analysis Predicts Interaction Changes Due to Differences of a Single Molecule in DNA |
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掲載 | Applied Sciences |
記述言語 | 英語 |
著者 | Jun Koseki, Haruka Hirose, Masamitsu Konno, Teppei Shimamura |
DOI |
要旨
分子力学や分子動力学といった理論的手法は、単一分子レベルにおける相互作用の違いを理解する上で非常に有用である。生命科学の分野では、置換基修飾を含むわずかな立体構造の変化が、生体内の機能に大きな影響を与えることがある。特に、核酸分子と結合タンパク質との相互作用の変化は、その代表的な例である。
本研究では、任意のDNAとDNA結合タンパク質の複合体構造を予測し、それらの相互作用の違いを解析するための戦略を提案した。本手法の有用性を検証するために、抗がん剤トリフルオロチミジン(FTD) を対象とした研究を行った。FTDはDNAに取り込まれることで薬理効果を発揮する。その結果、BCL-2関連X(BAX)配列のp53テトラマーへの結合親和性が、FTDの取り込みによって増加することを確認した。
一方で、FTD耐性細胞から抽出されたp53結合配列においては、FTDを含むDNAの結合親和性が通常のDNAと比較して大幅に低下していることが判明した。これは、耐性細胞ではチミジンがランダムにFTDへと置換されることで、DNA結合タンパク質との結合を阻害する位置に入り込み、耐性を獲得する可能性があることを示唆している。
本研究で提案した手法は、エネルギー的要素を考慮することも可能であり、計算科学が生命科学分野においてますます重要になることを示唆している。