RNA修飾の現在地

1. 従来の診断方法が持つアプローチの課題

現在行われている癌診断は、国や自治体が行うがん検診と医療機関が行う腫瘍マーカーを用いた検査が一般的です。
がん検診では早期発見が比較的可能とされる癌のみを対象とするので全ての部位の癌を対象とはしておらず、むしろ発見から5年生存率の低い癌については対象外とされています。
医療機関が精密検査として行う癌検査は、自覚症状をはじめとした罹患の兆候を患者本人が感じ取ってはじめて疑義がかかり検査へと進みますが、人間の体内には膵臓や肝臓など「沈黙の臓器」と言われるものも多く存在しており、癌が発見されたときにはもう手遅れなどといったケースが後を立ちません。

2. RNA修飾が変える診断の方法

体内で日々生成され「体のいま」を雄弁に語るRNAに着目した検査では、RNA修飾の種類と量を計測しその組み合わせと割合を比べることで、体内にどのような疾患が生じ(またはこれから生じようとして)おり、どの程度進行しているのかという診断を可能にします。
どのような疾患か分かりづらい症状であったりまたは表に見える病気の兆候や自覚症状がなくても、RNAの状況を調べることが体内に起きているエラーを正確に読み取らせ、病気を正確に特定するための度重なる検査を回避するとともに発症前の段階で病気の特定を行うことをも可能にします。

3. 最も困難な場所からのスタート

病気の超早期発見を可能にするために、我々は最も困難な疾患の早期発見から手をつけることにしました。それが膵臓がんです。
沈黙の臓器で自覚症状が現れない、臓器の位置から生体検査を行うにも患者の負担が極めて大きいステージⅢ以降の状態でないとまず発見されない、発見されたら5年生存率は他のがんに比べて圧倒的に低い癌の中でも最悪のがんです。
この膵臓がんの早期発見を可能にすれば、同様の技術で他のがんの早期発見も容易に可能になります。

4. 早期発見・早期治療の実現に向けて

膵臓がんを皮切りに我々の研究チームは新たな腫瘍マーカーの開発を行い、従来のものでは発見が困難であったステージⅡ以前の癌の発見を可能にしました。現在はこれをステージ0レベルの癌も発見できるまで精度を高めており、最終的には疾患の「兆候が現れた」段階で体の異変を検知できるところまでその精度を引き上げて参ります。
また、出来上がった癌の「細胞」にアプローチする現在の治療法に加えて、がん細胞を「生み出すメカニズム」自体に作用する治療法を確立することでそもそもがんに蝕まれない体を作ったり、仮にステージⅣまでがんが進行したとしてもその後の進行を食い止め、自己免疫力を回復させることでこれまで不可能とされてきた治療を可能にしていきます。

5. 全ての癌へのアプローチ、そして全ての疾患へ

RNA修飾に着目した診断アプローチは、現在はまず膵臓がんに特化した研究を重ね、実用段階まで進んでまいりました。
膵臓がんに対する研究のなかで、他のがんやその他の疾患についても少しずつわかってきたことが数多くあります

今後はさらに研究の幅を広げ、まずは全ての部位にわたるがんの早期診断を可能にし、いずれは糖尿病などの生活習慣病や、ウィルス性疾患に代表される様々な感染症などの早期発見も可能にして参ります。

私たちの使命は、「RNAで全ての病を読み解く」ことにあります。

PAGE TOP